模写部門

愛知県立芸術大学では、愛知県からの委託事業である国宝絵画模写事業を始めとし、多くの古典絵画模写研究を行ってきました。模写には、絵具の退色した色調や、剥落・欠損といった絵画作品の「今」を写す現状模写と、伝世の中で失われた制作当時の色彩や形状を再現し呼び起こす復元模写の手法があり、いずれの手法も作品研究を深め、制作を通して用いられた技術・技法を学び継承していくという意義があります。

現状模写

現状模写とは、汚れや傷、絵の具の変色も含め現在の状態をそのまま描き写すことをいいます。これは劣化の危惧される作品の資料作成に大変有効です。本大学では損傷の進む「高松塚古墳壁画」や焼失した「法隆寺金堂壁画」の現状模写を行っており、現在では失われてしまった図像を模写作品によって間近に見ることができます。

 

東寺蔵「両界曼荼羅図」現状模写制作(県委託事業 平成20~25年)
①線描
写真からトレコートに線描、剥落の形を描き写します。
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②試作
制作手順や絵の具を確認します。
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③本画線描
①を使って絵絹に線描します。
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④彩色
絵の具で細部まで描写していきます。
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⑤載金(きりかね)
金箔で細かな装飾を施します。
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⑥完成
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本證寺蔵「聖徳太子絵伝」全十幅 現状模写制作(受託研究 平成22~26年)
安城市歴史博物館からの依頼で、本證寺(安城市)が所蔵する重要文化財「聖徳太子絵伝」の現状模写制作を請負いました(愛知県芸受託研究)。完成した模写は安城市歴史博物館に所蔵されます。模写は、公開が制限される重要文化財の原本にかわり展示や解説に用いられ、聖徳太子の生涯を知らしめる「聖徳太子絵伝」本来の姿を再生することとなります。

全十幅のうち 第二幅
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熟覧のようす
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① 線描
トレコートに線描します。
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②絵絹の下準備
絵絹を天然染料で染色します。
(左)本画用(中)ヤシャ染料(右)試作用
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③線描、彩色
①を使って線描彩色し、細部まで描写します。(第三幅、太子像)
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④熟覧
原本と模写を並べて比較し、さらに調整します。(左)原本、(右)模写
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⑤完成
(左)模写の第七幅、第九幅
(右)原本の第一幅
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復元模写

名古屋城本丸御殿障壁画 復元模写(名古屋市復元模写事業 平成5年~現在)

平成30年に全面公開となった名古屋城本丸御殿の障壁画復元模写事業は、加藤純子氏(古典模写家)と共同体を組んだ愛知芸大日本画専攻の卒業生によって制作が進められました。本模写事業では、復元された御殿に合わせて描かれた当初の状態を想定した復元模写を行っており、絢爛な金碧障壁画や瀟洒な水墨画の世界を再現しています。