補絹・補彩‐修理工程紹介‐
今回はただいま作業中の修理工程を紹介いたします。
掛軸作品は巻き広げによって本紙に負担がかかり、横に筋状の傷みが発生しやすいです。
絵具の浮き上がりや剥落、本紙が切れてしまうことも・・・
このように切れてしまったり、虫食いなどで無くなってしまった本紙(この作品の場合は絹)の部分には、似合いの紙または絹で穴埋めを施します。(補絹)
穴が埋まっていなかったり、逆に残っている本紙部分に重ねてしまうと段差が生まれ、新たな傷みに繋がっていまうので、ライトで透過しながらぴったりの形に刳り貫き貼り付けていく、根気の要る作業です。
補絹が完了したあとは、補絹部分を周りになじませます。(補彩)
透明水彩絵具から抽出した顔料を膠水で薄く溶き、濃くなり過ぎないよう少しずつ塗り重ねていきます。
こちらも本紙に絵具がのらないよう注意を払いながらの集中力が必要な作業です。
補絹補彩が完了すると本紙の修理は概ね終了。あとは表具の形への仕立て直しを待つばかりです。